VALUという他のネットサービスとは一線を画する凄いサービスが公開された。このサービスのキャッチコピーは「あなたの価値をVALUでシェア」である。

valu
サービスを一言で言うと、株式市場に個人が上場できるみたいな感じ。個人的な第一印象(おそらく多くの人が抱いただろう)は、個人を金銭的価値に還元することへの嫌悪感。一挙一動が監視され、公然で何か話していて噛んだり滑ったら自分の株価が下がる、みたいなことを想像してしまった。ここまで行かなくとも、基本はそういうことだ。現状、ホリエモンさん、イケハヤさん、はあちゅうさんなど新しいもの好きで資本主義ラブな感じな人々中心に流行っているが、個人を金銭的な尺度でモロに測ることへの反感がこれからもっと出てきそう。

VALUの公式ツイッターに固定されているミッションは以下の通り。 

VALUは、夢や目標をどう実現していいかわからない方、金銭的な理由で実現できない方などが、継続的に支援者を募れる場所をつくりたいという思いで開発しました。発行主の情報、タイムライン、優待情報などをご確認いただき、皆様の「応援したいVALU」が見つかると幸いです。

「どう実現していいかわからない方」「金銭的な理由で実現できない方」を支援したいかは謎だが、大きな社会の流れでいえば「個人のエンパワーメント」である。

簡単にいうと、このサービスは個人が株のようなもの(VA)を発行し資金調達でき、投資家はその売買で投資家から優待サービスを受けたり、キャピタルゲインを狙える。建前的には、「継続的に応援」と響きはいいが、実態は短期や中長期に限らずキャピタルゲインが大半の理由であろう。

このVALUというサービスの概要は他のブログや公式サイトを見ていただくとして、ここでは、その影響について考えたい。一般人にはメリットないとか、インフルエンサーに金が集まるだけなど短絡的な議論が目立つが、ここではこのサービスが健全に普及した場合、VALUの発行者、VALUの購入者(投資家)、VALUの社会的な影響の三つの視点から考察したい。

(1)VALUの発行者にとっての「VALU」とは?
まず、VALUの発行者について考えよう。既にホリエモンさん、イケハヤさん、はあちゅうさんなど個人で活躍されている方々が中心に高額でそのVAが取引されている。

個人で資金調達して何ができるのか
VALUのミッションは個人の資金調達「頑張る個人を応援できるプラットフォーム」であるが、個人がお金を集めてどうするのか?

そこが(まだ)曖昧なのだ。個人でできることは限られている。イケハヤさんのような個人ベースで何人か雇ったりしている人や、youtuberのような個人技だと使い道が分かりやすい。既に有名であるか、或いはしっかりしたビジョンを提示できる人なら、すぐにお金を集めることができるだろう。銀行いったり、会社作ったり投資家周りしなくてもいいし、さらに返済義務もない。(後述するが、必然的に頑張らなければいけなくなるのではあるが)

でも、ある程度の規模のことをやろうとすると組織を作らなければいけないわけで、VALUで集めたお金を資本金に株式会社を作ることになるだろう。そうなると、どうなるか。イケハヤさんが1000万円VALUで調達し、会社を作って事業をする。会社を作ったなら企業価値を高めることになる。イケハヤさんはこの会社以外にもいろんな活動をしているわけでVA=企業の価値ではない。でも、会社がうまくいけば株価も上がるし(上場、非上場に限らず)VAも上がるだろう。なのでまぁそんなに問題はないのかもしれない。(このあたりは利益相反になるとか、詳しい人に聞いてみたいところだ)

資金調達して得た金は自由に使えるか?
ここで、一つの疑問が出る。

資金調達したお金を、遊んだり生活費にして使い切ってしまうのではないか?

お金の使い道の公開義務はない。イケハヤさんは既に楽に1000万円ほど資金調達したが、それをどう使おうが法的には問題ない。

その問題は、投資家の態度に委ねられるだろう。評判=株価(VA)なので、定期的に情報開示(どうやって金を使っているかや今後の活動方針)をしろという圧力をかければ済む話だ。企業の場合は、公開企業であればIRをしてこれからどんな事業をするかを伝え、その結果を定期的に情報共有していく。

VA発行者も同じようなことが求められ、やらない場合は非難を浴びVAは売られ価値が下がる。これは発行者は避けたい。価値がさがると新たにVA発行時には低価格でしか発行できなくなるし、一番きついのは自分の価値が「誰にでも分かる形で」下がることだ。それ故、必然的に投資家と歩調を合わせることになるだろう。発行者がどれだけ頑張るかは「投資家」の日々の厳しい目にかかっている。これは株式市場と同じ。

これについてもう少し掘り下げたい。 自分の価値が客観的な数字で表されることについて、実存的な視点でみるとどうか?要は主観的な生、の観点。これはかなりしんどいと思う。既にメディアに広く出ている人はネットの掲示板など影でこそこそ言われており、ある程度の慣れはあるかもしれないが、それが一つの「超客観的な数字」に集約されてしまうのだ。2ちゃんねるなどは見ないようにすることはできるが、VALUの数字はそうはいかないだろう。

ちょっとした失敗で、株価が下がり変な根拠のない噂で暴落することもありえる。事実誤認などでの株価の動きは心臓に悪そう。逆に、正しく評価され数字でもそれが反映されたら承認された感は強いだろう。他人からの目も気になるはず。友達と会っても「今日株価悪いね〜」とかいう話題になるのだろうか。VA発行するならそのようなことを承知の上で行う必要がある。

 
(2)VALUの購入者(投資家)にとっての「VALU」とは?
VALUの購入者にとってはどうだろうか?これは前述の通り、以下の三つだ。

  1. 好きな人を応援できる
  2. 優待サービスを受けられる
  3. キャピタルゲインを狙える
ひとつずつ見ていこう。

1,ホリエモンが好きなら、投資すればホリエモンは喜ぶ。或いは全然知らない人でもその活動方針やプロフィールを見て共感し投資してもいい。厳密に言うと、発行者が自身のVAを売るときには、彼らにお金が届くが、流通市場で売買しても彼らに金銭的な増減はない。ただ、長期保有する場合は、株価の下支えとなり彼らに貢献できる。

2,優待サービスは普通の株式と同じだ。ホリエモンの株(VA)を持てばそこでしか手に入らないホリエモンからの情報をゲットできたりする。意外とこれ狙いの人もいるかもしれないが、個人的には次のキャピタルゲインがメインだと思う。

3,そして一番大きいのがキャピタルゲイン。買った価格より高値で売れば差額が利益となる。まだ売れてないときに投資していれば、彼/彼女が成功したときに大きなキャピタルゲインを得ることができる。株式市場と同じで市場価格はその発行者(企業)に直接関係するニュースだけでなく間接的な情報も含め上下する。ホリエモンに投資していて、「日本政府がロケット事業への助成金を決めた」などのニュースが出れば一時的にホリエモンのVAは上がるだろう。(ホリエモンは宇宙事業をやっている)

所有権と議決権がないから、VA発行者のやりたい放題!?
さて、VALUが株式と違う最も大きな点は、それが所有権や議決権やを含まないということだ(あと配当も)。株式会社であればその所有者は株主である。VALUの場合、発行者を所有はできないししたくもないだろう。それにその人の方針に口出しできる議決権もない。だから、発行者のやりたい放題。

でも、実際にはそうならないだろう。ある程度の知名度を持ったら、公的に責任を負うことになる。なぜなら、(1)で書いた通り、その人の価値が客観的数字となり世界に公開される。下手なことをすれば価値が下がり、誰も相手をしてくれなくなる。

企業であれば、それが経営者、従業員、株主など誰の責任で潰れたのかは議論の余地があるが、個人の場合はその人が100%。自分であることはやめれない。自分が上場すると、あらゆる言動が監視されることになる。(もちろん、VALUの現状ではインフラとして普及していないのでそんなことにはならないが、これが証券取引所に上場されているような株のような流動性を持ち一般の人にも普及すればそうなる)

上場している個人が死んだらどうなるか
余談であるが、投資した株の個人が死んでしまったらどうなるのか?会社はgoing concernとして基本的には永久に存続する想定だが、個人はいつか死んでしまう。が、これは問題ない。むしろこれが醍醐味となるかもしれない。死んだら新規に株式発行はないだろうが流通市場は残る。例えば、最近田中角栄の本が売れたが、すると田中角栄株が値上がりする。こうして、過去の偉人は永久に歴史に残るのである。

(3)社会にとっての「VALU」とは?

最後に、「VALU」の社会的な影響について考えたい。

一般人への影響:人を数字的価値に還元して判断するようになる
まず、よくネット上で聞かれるのは「一般人には何の影響もない」というもの。これは違う。個人が上場されるようになれば、当該の個人を「客観的な価値指標」で簡単に価値判断できるようになる(ここに人格を価値化することに対する批判が出るだろうが)。初めて会った人、知った人でもその人のVA(株価)を見れば、「時価総額10億円、すげ〜」と市場で揉まれた客観的な数字で分かる。こうなると、上場していない一般人も自分や周囲の身近な人達を「数字的な価値」で見る習慣が身につくかもしれない。これはあまり望ましくないように感じる。

経済活動の主な担い手が企業から個人へ
次に、これまでは、企業が上場し資金調達し社会的に責任を担いつつ、大規模な事業に取り組んでいた。これが個人に分散されていく可能性がある。VALUを提供している企業がどのようなビジョンを持っているのかは分からない。ビジョンの通り一部の「個人的に資金調達したい人」向けという軸は強いのだろうか?或いは、いずれは全ての人間が上場されるような極端な展開も視野に入れているのだろうか。

企業(法人)の世界を見てみると、日本には約400万の企業(個人事業主含む)がありそのうち約4000社(日本の全ての証券取引所)が上場している。ざっくり0.1%だ。ごくわずかの企業しか上場していないのだ。上場している企業は社会的な責任を明確に負っているが大半の企業は情報開示もしていない。(ちなみに個人で考えると、日本の人口を1億2700万人として0.1%は12万7000人くらい)

個人の上場が普及するには、社会が、個人が中心となり経済活動等が進むという在り方になる必要がある。上述の通り、ブロガーやyoutuberなど個人中心であればそれでいいが、現状の経済活動の主流は法人だ。企業が上場するというのは、大規模にビジネスするためだ。もちろん透明性高めた組織づくりとか、知名度高めて従業員のためになるなど細かな目的もあるが、主には事業拡大である。「資金調達=大きなことするため=多くの人で取り組む」である以上、法人というやり方が望ましい。なので企業がブロックチェーン技術使ってトークンを発行する仕組みは欧米で既に大規模調達の結果が出ている。

上場した個人が集まりチームを組んで、資金調達し頑張るということも考えられなくはない。従業員まで上場していて、上場銘柄の集まりの投資信託みたいになってしまう。そうなると世界やわれわれ個人の生き方も大部変わるだろう。そこまで進むとどうなるのだろう。時間をとって別途考えみたい。

ツイッターなどと同じように、こういうインフラ系のサービスは今後どのように使われるかは未知数である。この社会的な影響については何か小説みたいので描くのが一番分かりやすそう。そういうのがあると一つの道筋としてVALUのようなサービスの展開が加速するかもしれない。 

以上、VALUが健全に育った場合、発行者、投資家と社会にどのような影響があるかについてざっくり書いた。